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「イシューからはじめよ」から学ぶ逆算のリサーチ法

By Shiho Kambara6 min read

圧倒的な知的生産性を誇る人は、ふつうの人といったい何が違うのでしょうか? エール大学で脳神経科学のPh.Dを取ったのち、マッキンゼーで消費者マーケティングを専門としたコンサルタントであった安宅和人氏が、「問いの建て方」と「仮説の建て方」を体系的かつ具体的に著したベストセラー「イシューからはじめよ」をご紹介します。

ふつうの人と知的に生産的な人の違い

なにかと「寝なきゃなんとかなるでしょ」という根性論で進めてしまう筆者に友人が勧めてくれた本がコレでした。

表紙には「やるべきことは100分の1になる!」という刺激的かつ魅惑的なタイトルが......。

先日改めて読み返して、ものすごく良い本だと再確認したので、この場を借りてまとめたいと思います。

以下、概略です。

図解「イシューからはじめよ」
図解「イシューからはじめよ」

以降、それぞれの項目について、具体例とともにどのような手順で進めるべきなのかまとめたいと思います。

まずは、イシューの良し悪し。「良いイシュー」を判断するには何をチェックすればよいのでしょうか?

イシューの良し悪しを見極めるにはどうしたらいいのか

安宅氏は、イシューの良し悪しを見極める上で、以下の3つの基準を提案しています。

  1. 単なる設問ではなく、本質的
  2. 深い仮説がある
  3. 答えが出せる

条件1「単なる設問ではなく、本質的」の具体例

「イシューからはじめよ」においては、本質的なイシューどうかは、その後の展開にどれくらいの影響を与えるかで判断できるとしています。

undraw.co

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悪いイシュー: ブランドAの売上が低迷しているのはなんでか?\ 良いイシュー: ブランドAの売上が低迷しているのは、購入者が減っているからか、それとも購入単価が下がっているからか?

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いいイシューを見ればわかるように、イシュー自身に答えが出ることによって、具体的な次のステップが見えてきます。このように、その後の行動に大きく影響する分岐点となることが、良いイシューの前提となります。

悪いイシュー: 今のブランドで戦い続けるか、ブランドをリニューアルするか\ 良いイシュー: そもそも、なぜ今のブランドは低迷しているのか?市場が縮小しているのか、競合に負けているのか?

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こちらの例でも、一見、悪いイシュー「今のブランドで戦い続けるか、ブランドをリニューアルするか」は良いイシューのように見えますが、前提となるイシュー「そもそも、なぜ今のブランドは低迷しているのか?」が欠けており、本当にそこから答えを出すべきではない地点をイシューに設定してしまっています。

条件2「深い仮説がある」の具体例

undraw.co

よいイシューのもう一つの観点として、次の2点が挙げられています。

  • 問への答えがYESであれば、常識を否定できるようなイシュー
  • 検討の対象を新しい構造で説明できるか?新しいルールや、共通性、新しい観点を与えてくれるグルーピングが発見できるか?

例えば、最近のビジネス情勢から例を挙げると、こんな感じなのではないでしょうか。

Airbnb [^1]

airbnb.jp より
airbnb.jp より

  • 旅行客は、ホテルよりも現地の見知らぬ人の家に泊めてもらいたいのではないか?
  • 宿泊業を営まない人であっても、自分の家に旅行客を泊めてお金を稼ぎたいのではないか?
  • 見知らぬ人を家に泊めることに抵抗感を持つ人は、減っているのではないか?

Uber[^2]

uber.com より
uber.com より

  • レビューのないプロのタクシードライバーの運転より、レビューのある一般の人の車の運転のほうが、実は安心できるのではないか?
  • 安くなるならば、遠回りしても良いと考えるタクシーユーザーは多いのではないか?
  • 一人で乗るタクシーよりも、見知らぬ人と相乗りするほうが、コミュニケーションが生まれるので体験したくなるのではないか?

政治でいうと、常識や直感に反する仮説としては、以下のようなイシューが考えつきます。

  • 結婚制度を廃止することで、むしろ子どもを生みたい人は増えるのではないか?
  • 消費税を廃止することで、消費が活発になり、むしろ政府の歳入は増えるのではないか?
  • 死刑を廃止することで、むしろ犯罪は減るのではないか?
  • 非正規雇用の増加が問題になっているが、正規雇用よりも、あえて非正規雇用を選択する人が増えているのではないか?
  • 未婚率が上がっているが、それは経済的要因によるもので、現代の20代は過去よりも結婚願望が強いのではないか?

条件3「答えが出せる」の具体例

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イシューの良し悪しを見極める最後のチェックポイントとしては、意外にも「答えが出せるか」が挙げられていました。

「そんなの当たり前じゃないか」と思ってしまいそうでしたが、「現在自分の持っているツール・時間的な制約の中で、確実に解けるものに絞る」と言い換えると、しょっちゅう忘れてしまっている観点だなぁとも感じます。

悪いイシューの例: 望遠鏡が発明される以前に、宇宙の成り立ちについて研究するといった、自分が生きている間の科学の進歩では、とうてい解明できないような事象の解明。\ 良いイシューの例: 現代科学の与えてくれる道具の中で解けそうな事象の解明。

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以上、「イシューからはじめよ」における「よいイシュー」の定義についてまとめました。

ここからは、よいイシューを立てた後の要点をご紹介していきます。

よいイシューを立てた後に必要なこと

「イシューからはじめよ」では、生産的になるために、最も重要なのは、解く前に、”よいイシュー”を見極め絞っていることだとしています。と同時に、著者は「これだけではバリューのある仕事は生まれない」とも指摘しています。そのために必要なのが、「解の質を高めること」だと。

そして、その解の質を高めるために以下の2つの作業を行うことを提案しています。

  1. ストーリーラインづくり
  2. 絵コンテづくり

以降は、「イシューからはじめた」後に行うべき、この2つの作業についてご紹介します。

ストーリーラインとはなにか

まず、「ストーリーラインづくり」についてです。

「イシューからはじめよ」の中でストーリーラインとは、「仮説を最終的な解になるように並べ替えてる」作業のことを指しています。

......。スッキリしません。具体的には、どういうことなんでしょうか?

ストーリーラインづくりには2つの工程があるとされています。

  1. イシューの分解
  2. 1.で分解したイシューとその仮説が、おおもとのイシューの解になるように組み立てる

まずは「イシューの分解」の具体例から見ていきます。

イシューの分解とはなにか

undraw.co

大抵のイシューは大きすぎる問いかけなので、解を出しにくいものです。

そのため、イシューにいきなり仮説を出すよりも、イシューを分解して小さく、答えやすくし、よいイシューに近づけた上で、一つ一つに仮説を作っていくやり方を安宅氏は提案しています。

イシュー「A社の売上をアップするにはどうしたらいいのか」 → 

サブイシュー「A社の売上が低迷している原因は、商材よりも集客にあるのではないか」「売上は低迷しているが、シェアはむしろ拡大しているのではないか」......など

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ストーリーラインを作るとはなにか

こうして分解していき、答えを出しやすくしたサブイシューのそれぞれに対して仮説を設定し、それらを一番おおもとの「イシュー」に答える形に、ストーリーとして配置していく作業がストーリーラインとされています。

ポイントは、このストーリーラインは、サブイシューに答えが出るたびに更新していくということ。

  • ブランドAが売れない原因はBでなくC
  • ブランドAのシェアは拡大しているのではないか
  • 市場ニーズはDではなくEになっているのではないか
  • 自社の強みが生きるのはFではなくむしろGなのではないか

といったサブイシューの例をストーリーラインに組み立てていくとすると、

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売上Aが売れない原因はAではなくです。狙うべき市場は、時代背景が〜で、市場ニーズが〜に分類できるなか、自社の強みが生きるのはGなのでEを狙うべきです。

のような感じになります。

でも、途中で、仮説のひとつ「ブランドAのシェアは拡大しているのではないか」とかが覆っちゃうかもしれないので、ストーリーラインを修正していく必要があるということですね。

絵コンテをつくり分析を開始する

「イシューからはじめよ」における絵コンテとは、自分の立てたイシューとその仮説の証明としての、(最終的なプレゼン資料に載せるような)グラフや図表のデザインを指します。

それを具体化して、「この数値はしっかり取らなければいけないな」というのが見えてから、分析に入ることを提案しています。

まとめ

以上、安宅和人氏の著書「イシューからはじめよ」(英治出版)の内容を紹介させていただきました。

誤解を恐れず、この本の提唱する手法を一言で言えば、全体像から逆算しつづけるアクションを繰り返して、解を磨いていく方法論なのだと思います。

大学生の時にこの本に出会えていたら途方もない時間を無駄にせず済んだんだろうな...と悔しく思える本でした。

長々とお付き合いくださり有難うございました。

Cantas株式会社では、ブランドデザインからWeb制作・Webマーケティングまで一貫したサポートを行っております。

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[^1]:民間人の家に旅行客を泊めるプラットフォーム

[^2]:乗せたいドライバーと乗せてもらいたい人達をつなぐ、あいのりタクシーのプラットフォーム

本作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-非営利-改変禁止 4.0 国際ライセンスOpen in a new tabの下に提供されています。

Shiho Kambara

Marketing Engineer, Cantas

CantasにてデジタルエンジニアリングからWebマーケティングまでを広く担当。東京大学在学中に経済産業省による未踏IT人材発掘・育成事業にてスーパークリエータ認定を受ける。フリーランスのマーケター兼エンジニアとして、複数メディア・サービスの立ち上げに従事。東京大学 大学院工学系研究科 技術経営戦略学 修士所属。

お仕事のご依頼はCantasまでご連絡ください🙏

Shiho Kambara